セミで死にかけた話

思い出
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暑い暑い夏。

この季節は私にとって恐怖の季節。

 

そう、アイツがやってくるから。

 

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セミで死にかけた話

 

忘れもしない、その日は「押忍!! 豪炎高校應援團」の新台導入日。

 

実はその前日に、それまで長年やってきた仕事を辞めたため、何にもとらわれることのない一日がやってくるはずだった。
※もちろん次の仕事が前向きに決まっていたので辞めた

 

随分と久しぶりに体感する「仕事をしていない状態」というのはなんとも身軽で、解放的で、その身に大変大きな自由を感じたものです。

 

であるならば明日、何をするか?

 

そう、新台の「押忍!! 豪炎高校應援團」を打ちに行こうと思うわけです。

 

とは言っても、実は明日は一日完全に自由な時間になるというわけではなく、それというのも実家に帰っていた妻と子供が丁度東京に帰って来る日でもあったのです。

 

しかしそれでも朝一から夕方までは時間がたっぷりとあるわけで、久しぶりに味わう「抽選に並び」、「導入台数以内の番号を引き」、「新台を打つ」、というスロット好きとしてはそれだけで垂涎ものの行為に、眠る前から興奮を隠せずにいたものである。

 

じじじ・・・

 

「抽選に並ぶ」、これは寝坊をしなければいいだけのこと。

 

ばたばたばた・・・

 

「導入台数以内の番号を引く」、ここが一番の難関。並び自体が少なければいいがもしも大量の人数がいたら?並び数の分母は、ただただ少ないことを祈るしかない。

 

じじじ・・・

ばたばたばた・・・

 

「新台を打つ」、導入台数以内の番号を引けたなら、あとは新台の入った島配置を確認し、再整列の時間をきっちりと守ればいいだけだ。

そして台を確保できたならあとは素晴らしい引きと展開を祈るだけ。

 

スロット打ちにとって、スロットを打っている時よりも、並んで抽選を受けている時やその前日があれやこれやと想像が出来て一番楽しい時間なのかもしれない。

 

じじじ・・・

ばたばたばた・・・

 

じじじ・・・

ばたばたばた・・・

 

不穏な音に気づいてはいるも、明日への期待に打ち消されていたのだ。

 

さあ今夜は寝よう。寝坊してはいけないのだから。

 

・・・

 

翌日、余裕のあるとは決して言えない時間に目が覚める。

いつもギリギリまで寝てしまう、私の悪いクセだ。

 

足早にある程度の身支度を整え、大きなごみ袋を片手に一つずつ掴み、ごみ収集所にごみを出してから自転車にのってホールへ向かう。

 

これで完璧だ。

ごみを出すくらいの時間なら十分にある。

 

さあ、家の扉を開けたその瞬間。

 

そこに転がるのはひっくり返ったセミが2匹。

 

忘れていた。いや、正確に言えば思い出したくなかったのだ。

 

私の住んでいるアパートは2階建てで、1階に一部屋、2階に二部屋というこじんまりとしたアパートなのだが、その2階部分にあらゆる虫がよく迷い込んでくるのだ。

 

なぜかというと、当然夜には電気がつくので、その明かりに誘われて1階のアパートの入り口から虫が入ってくる。

そして一度入ったが最後、虫に1階の入り口に向かう頭はないため、2階の部屋の入口前の狭い踊り場部分でのたうち回るのだ。

 

そして何を隠そう、私は虫が大の苦手なのだ。

 

小さい頃は平気だったのに、どうして大人になると虫にあんなにも恐怖心を覚えてしまうのだろうか?毒も牙も爪すらもない虫相手に。

 

「そうだ、昨日の夜、じじじ、ばたたと音がしていたな…」

 

扉を開けた瞬間に明確に思い出す。

 

いつもであれば扉近くに備えている虫取り網で捕獲すべく奮闘となるのだが、今日は新台抽選の時間があるため時間がない。

生憎、二匹のセミは壁にくっついているわけでも、ばたばた飛んでいるわけでもなく、両者どちらとも仰向けにひっくり返っている。

 

「頼む、もう死んでいてくれ。」

 

土の中で7年間、地上に出て来てたった一週間という短い命の生き物にそんな言葉は向けたくはない。

 

向けたくはないのだが、怖いものは怖いのである。
※実際にはセミは基本的に一週間以上生きるのだが、それはここでは語らないことにする

 

そろりそろりとセミの転がる入口外の踊り場へ足を踏む出す。

 

セミは…

 

動かない。

 

やはりもう死んでいるのか?

 

ごみを踊り場部分へ放り出す。

 

セミはまだ動かない。

 

あまり時間もない、おそらくセミは死んでいる!

 

行け!ええい、ままよ!

 

両方の足を外へ出し、扉を閉めて鍵を閉めたその瞬間!!

 

 

ばたばたばたばたっ!!

 

せ、セミが暴れだした!

 

ばたばたばたばたっ!!ばたばたばたばたっ!!

 

あいつら生きてやがった!!

 

ばたばたばたばたっ!!ばたばたばたばたっ!!ばたばたばたばたっ!!

ばたばたばたばたっ!!ばたばたばたばたっ!!ばたばたばたばたっ!!

 

焦る私、暴れるセミ。

 

ゴミはこのまま置いていくわけにもいかず、二つのゴミ袋を片手ずつ両手でむんずと掴み、階段へと急ぐ。

 

ばたばたばたばたっ!!ばたばたばたばたっ!!ばたばたばたばたっ!!

ばたばたばたばたっ!!ばたばたばたばたっ!!ばたばたばたばたっ!!

 

もう、このまま外へ逃げ切るしかない!!

 

そして階段へと一歩踏み出した瞬間!!

 

 

ゴロゴロゴロゴロ!!

 

どかん!

 

 

私はゴミ袋と共に階段を転がり落ちた。

 

しかも、階段を下り切ったすぐ先には壁があるため、階段から転がり落ちてその勢いのまま壁に頭から激突したのだ!

 

二つのゴミ袋に埋まるように仰向けに倒れる私。

正確に言えば、壁に頭をぶつけているのでくの字のような恰好。

ゴミ袋の中身はあふれることなく済んだのがせめてもの救いか。

 

しかしこのまま倒れているわけにはいかない。

やつら(セミ)がいつやってくるかもわからない。

 

痛みよりも恐怖。

とりあえず体制を立て直しゴミを抱えアパートの外へ逃げ出した。

 

よろよろとした状態でまずはゴミ収集所へゴミを出す。

 

壁にぶつけた頭と、階段から転げ落ちた時に強打した足が痛い。

 

仕事から解放された晴れ晴れしい気持ちのいい日のはずが、一転最悪の日になってしまった。

まともに歩くこともできず、ひょこひょこと歩くことしか出来ない。

 

まさに満身創痍。

そう、満身創痍の状態だ。

 

そして私は思った。

 

「まだ抽選の時間は間に合うな…」

 

一応、頭を強打したこと(セミのいた経緯も話して)を妻に電話で伝えた。

 

そうしたらなんと…

 

スロットなんて行かずに病院へ行けと怒られたのだ!

 

まあ、当然である。

こんな状態でスロットへ行こうと思うやつが馬鹿なのだ。

 

そしてその足で病院へと向かい、頭に異常がないか、足の骨に異常がないかを調べてもらった。念のためCTまで撮ったのだ。

 

結果は◎。

 

とくに危険なものは見つからなかったため、打撲という診断を受ける形となった。

 

そしてそれを妻に電話で伝えると、妻はホッとした様子を見せた。

 

よし、これで

 

 

ホールへ行ける。

 

この馬鹿(私)は足を引きずりつつホールへ向かう。

 

そして慎重に階段を下りて地下一回のスロットコーナーへ行くとなんと…

 

新台の「押忍!! 豪炎高校應援團」に空き台が1台あるではないですか。

 

神様、ありがとう。

いや、神様がいるならそもそも階段から落とさないで頂きたいものだが…

 

しかしなんと初打ちの「押忍!! 豪炎高校應援團」で上乗せ特化ゾーンの森羅万象に突入させることに成功!

 

森羅万象は30G間の毎ゲーム高確率で上乗せを抽選する特化ゾーン。

しかも輪廻転生が発生すれば消化ゲーム数に関わらず30G再セットというST感覚の超上乗せ特化ゾーンなのである。

 

細かい数字は忘れてしまったが、輪廻転生を繰り返し成功させて大量上乗せに成功した私(馬鹿)は3000枚超えの大量獲得に成功したのであった。

 

頭を壁に強打し実際に輪廻転生していたかもしれなかった馬鹿が、スロットで輪廻転生しまくったという…、山佐も中々粋な事をしてくれたものです。

 

そして足を引きずりながら妻と子供を迎えに行くと、あまりの満身創痍さに笑われたのもよく覚えています。

 

 

ただでさえ嫌いだったセミが、この事件があってからさらに嫌いで怖くなってしまいました。

しばらくは、いえ、今でも外で歩いている時に「じじじ」と音が聞こえるだけでビクっとしてしまうのです。

 

 

暑い暑い夏。

この季節は私にとって恐怖の季節です…。

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